「脂肪は減らない?―痩せたいのに痩せない人の特徴3選」
脂肪分解の最新メカニズムを専門家が紹介!
By 渡部 広介 公開日:2025-05-21
脂肪細胞が減らなくても体重が減るメカニズム
脂肪と聞くと「白っぽい脂のかたまり」が頭に浮かぶかもしれませんが、科学的にいうと「脂肪」は脂肪細胞の集合体を指します。
体内に存在する脂肪細胞は褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞の二種類に分類されますが、成人してから体重が増えすぎてしまう原因の多くは白色脂肪細胞に余分なエネルギーが蓄積されてしまうことによります。
白色脂肪細胞についてもう少し詳しく説明すると、この脂肪細胞は直径約0.08mm程度の丸い形状をしています。
一般成人の身体には250~400億個ほどの白色脂肪細胞が存在するといわれていて、この脂肪細胞に余分なエネルギーが吸収されてしまうと元の直径の約1.7倍(0.13mmから0.14mm)まで肥大し、結果として体重を増やしてしまうわけです。
恐ろしいのは、白色脂肪細胞の肥大化が進むと白色脂肪細胞の数自体が増えてしまうことです。
脂肪細胞は代謝活動として分解と再合成を繰り返していますので、運動によって白色脂肪細胞の中にある脂肪滴(トリグリセリド、ステロールエステルといった中性脂肪)がエネルギーとして使われても、再び合成して体内に残り続けます。
「脂肪燃焼」というキャッチコピーを目にするとサプリメントの摂取や運動効果によって脂肪細胞自体が消えると思いがちですが、増えてしまった白色脂肪細胞は数を減らすことなく体内に蓄積されてしまうということです。
前述のとおり脂肪細胞自体が減ることはないといわれていますが、食事制限や運動によって体脂肪率が減ったり体重が減ることはありますよね。これは白色脂肪細胞の中にある脂肪滴が食事制限や運動効果によってサイズダウンする現象で、これが続くと体脂肪率や体重の減少につながっていくわけです。
白色脂肪細胞をサイズダウンさせるには
一度身に付いた白色脂肪細胞が消えてなくなることはありませんが、前述のとおり食事制限や運動によって白色脂肪細胞のサイズが小さくなることはあります。
▪ 食事制限
白色脂肪細胞の再合成時に、体内にある脂質や余分な糖質が白色脂肪細胞に取り込まれてしまうと脂肪滴が大きくなってしまい体重が増えてしまいます。これを防ぐためには摂取カロリーをコントロールして、体内に余分なエネルギーが残らないようにする必要があります。
[ 参考ページ ]夏に間に合う!1分でできる簡単カロリーコントロール
▪ 筋トレ
筋力トレーニングは筋肉中、血液中の糖質をエネルギー源とします。摂取カロリーがオーバーして体内に余剰な糖質が残ったとしても、それをエネルギーとして筋力を発揮することができますので白色脂肪細胞の肥大をおさえることにつながります。ただし、筋力トレーニング中に脂質がエネルギーになるわけではないため、短期間で白色脂肪細胞を減らそうと筋力トレーニングだけ頑張っても成果が出るまでに長く時間がかかるでしょう。その間にモチベーションが下がってしまってはいけないので、「筋トレ+食事制限」か「筋トレ+有酸素運動」が効果的といえます。
▪ 有酸素運動
有酸素運動は能動的に白色脂肪細胞をサイズダウンさせることに関して最も有効な手段といえます。
有酸素運動を一定強度で一定時間継続すると「副腎髄質(腎臓の上、副腎の内側)」からアドレナリン1)やノルアドレナリン2)が分泌され、白色脂肪細胞の中にある脂肪滴(トリグリセリド、ステロールエステルといった中性脂肪)を放出させます。さらに脂肪分解酵素といわれるホルモン感受性リパーゼ3)を活性化し、ホルモン感受性リパーゼはトリグリセリド(中性脂肪)をグリセロールと遊離脂肪酸に分解し血中に放出してくれます。血中に放出された遊離脂肪酸は各器官(筋肉や肝臓など)のミトコンドリアに運ばれ運動時のエネルギーに変換され、最終的には水(体液や尿として排泄)と二酸化炭素(呼吸によって排泄)になって消えていきますが、この一連のエネルギー生成には多くの酸素が必要であることが「脂肪燃焼には有酸素運動が効果的」と言われる理由です。
1):ストレスや興奮時に副腎髄質から分泌されるホルモンの一種で、交感神経系の活動を活発化させる役割を担います。
2):交感神経の情報伝達に関わる神経伝達物質であり、また副腎髄質から分泌されるホルモンの一種です。
3):主に膵臓で作られ、膵液中に分泌される消化酵素で、脂肪滴(トリグリセリド、ステロールエステルといった中性脂質)をグリセロールと脂肪酸に分解する働きがあります。
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痩せたいのに痩せない人の特徴3選
▪ 食事量が多すぎる
運動習慣をもちはじめた人ほど陥りやすいのが「運動した分、多く食べても大丈夫」と油断して摂取カロリーが消費カロリーを越えてしまうパターンです。運動初期段階は疲労感が大きいため、運動で実際に消費するカロリーよりも多くのカロリーを消費した気になってしまいますので注意が必要です。
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▪ 運動量が少ない
運動習慣を身につけたいけど「仕事や家庭の事情で定期的に運動できない」と悩んでいる方は少なくないでしょう。そんな方ほどスキマ時間でのちょっとした運動を視野にいれていただきたいです。ジムで何時間も運動しないと痩せないわけではないので、まずは実践可能な運動を探してみましょう。
▪ 基礎代謝が低い
筋肉量が少なければ「何もしていなくてもカロリーを消費する」基礎代謝が低くなります。同じ身長、体重でも筋肉量に差があれば痩せやすい人、痩せにくい人に分かれるのです。健康のために適正体重を維持するには、筋力トレーニングで基礎代謝を上げることが大切です。
渡部 広介(Kosuke Watabe)
株式会社フィットネスマーケティング 代表取締役社長兼CEO
[出身地]New Zealand(Wellington)
[国 籍]Japan
ランニング×トレーニングのオリジナルメソッド(特許取得済)を取り入れたグループランニング&ファンランイベントを全国で展開中。NIKEオフィシャルクラブパートナージム経営者。